『暇だったから』
初めて、身体を重ねたときに彼はそう答えた。
それ以外に、理由なんてみつからないから、そうなんだと納得した。
「お前、案外、暇人やなぁ。」
意地悪そうに笑って、跡部を引き寄せた。
「暇やから、俺と寝るんやろ?」
耳元でささやく。
「だから、なんなんだよ?」
「別に・・何かと忙しそうやのに、俺んとこ来よるから。」
浅く口付けて。
「実は俺のこと、好きやろ?」
近づけた顔を、手で押しのけられた。
「馬鹿か?お前は。」
心底、あきれ返ったような口調だった。
「お互い様。」
ハッ・・と鼻でせせらわらう。
「うぬぼれんな。」
「うぬぼれさしてよ。」
今度は深く口付けた。
余熱の残る体を抱いて
うかされながら 見た夢は
底なし沼に 足を取られて
果てしなく 堕ちる夢
先に堕ちたのは
君か 僕か
「・・・ん・・忍足・・・?」
広く感じたベットに違和感を覚え、跡部は身体を起こした。
寝いていたはずの、傍らに誰もいないことに少しいらだつ。
枕元には、灰皿代わりになったコーヒーの空き缶に刺さる、たくさんの吸殻。
鼻をつくのは、嫌な残り香。
「あの、馬鹿。」
いなくなった彼を思って、悪態をつくのが精一杯。
殺風景なその部屋は、いつになく凍えるように寒かった。
足元にあった毛布に手を伸ばす。
「・・つ・・」
下半身に甘い痛み。
残る、痕。
堕落した、身体。
堕ちていく、魂。
「なんや、跡部、起きてたんか。」
ふと、顔をあげるとドアのところに忍足が立っていた。
手にはまだ、真新しい煙草が握られている。
「・・忍足・・・・」
何か言葉を飲み込んだ。
「お前、なんて顔してんねん。」
忍足がベットに近づき、強く抱きしめる。
「泣くなや。」
まるで、泣き出しそうな顔に見えた。
「泣いてねぇよ、馬鹿。」
「泣くな。」
「・・お前のほうがよっぽど・・」
泣き出しそうに見えた。
「かなわんなぁ・・」
「あ?」
「溺れ死にそうになるわ・・」