焼け焦げた体を抱いて
恋に焦がれたと
どうか笑って
響くのは甲高い声と息遣いだけ。
「・・忍足・・っ・・」
細い腕がすがりつくように、きつくしめられた。
果てるのも、一瞬だけど、朽ち果てるのも
思った以上に早いのだと
最近知った。
「・・もう、帰るん?」
乱れたベットの上で、煙草をくわえながら忍足はぼやいた。
「帰る。」
そのぼやきにたいして、何もかもを否定するような一言と
一瞥。
「・・煙草、やめたんじゃなかったのかよ。」
「ああ、そやったなぁ。」
低く笑いながら、ゆっくりと煙草の煙を吐き出した。
「学校ではやめろよ。」
「わかってるわ、そないアホやないし。」
「どうだか。」
「嫌やなぁ、信用されてない?」
「信用できねぇ。」
立ち上がって、制服のワイシャツのボタンを閉めていく彼の手を、そっと止めた。
「なぁ、今日、泊まっていかへん?」
その手を少し乱暴に払う。
「帰る。」
「明日、学校、休みやで?」
「休みだからって、てめぇの家に泊まる理由なんてねぇよ。」
少し大げさに、傷ついた振りをしてみる。
「俺ら、『オトモダチ』やん。」
「今更、馴れ合うな。気持ち悪い。」
着々と制服を着ていく跡部を、少し名残惜しそうに見つめてみても、彼の気が変わるなんてことがないのは、いつものことだった。
「・・・ほんまに帰るん?」
とりあえず、もう一度だけ後ろから抱きしめた。
「さわんな。」
あからさまに不機嫌そうな彼の横顔は不本意にも、綺麗だと思った。
「愛してる。」
「死ね。」
「やっぱ、信用されてない?」
「信用したくもない。」
「ほんまやのになぁ。」
「息の根、とめてやろうか?」
「あぁ、そら、どうも。」
荒々しく扉を閉めた後には、苦々しく残るセブンスターの残り香。
いつからだろうかと、たまに思う。
こうやって、ただ身体だけ重ねあう関係になったのは。
お互いに、打算的な関係は嫌いなのに。
いつのまにか。
いつのまにか。
求め合うのは身体だけ。
愛なんて口に出すのはいつものことだけど。
「愛してる・・ねぇ・・」
あまりにも二人の関係に似つかわしくない言葉に、失笑した。
「相変わらず、もてるねー侑士。」
いつものように昼下がりの屋上で、後からきた岳人が忍足の肩に手を回した。
「見てたぜ、さっき5組の子に告られてたろ。」
「あーあの子5組の子なんか。」
「・・知らねぇの?割と人気の女だぜ。」
忍足は興味なさそうに青空を仰いだ。
「まぁ、綺麗な子やったけど・・・・」
「跡部にはかなわない?」
「そやね。」
いたずらっ子のように、岳人が笑った。
「昔のお前なら考えられないような言葉。」
「そぉか?」
「だって、お前、跡部のこと嫌ってたし。」
あぁ、そういえば。
なんとなく、昔のことを思い出した。
「オレ、ボンボン苦手やし。」
明らかに世界が違うオーラを出していた彼を、苦手だと意識してたときもあった。
同じテニス部に入部して、何度となく話す機会もあったが、苦手意識が消えたことはない。
今も、そうかもしれない。
「でも、今は仲よさそうじゃん。」
「別にー。俺ら、『セックスフレンド』ってやつやし。」
岳人は大きくため息をついた。
「そんなこと、俺に言うなよ。」
「なんで?」
「なんか、跡部の顔まともにみれね・・・」
「あの子、ベットの中ではかわええよ?」
「侑士っ!」
からかったことに腹を立てて、忍足を小突いた。
「あー今日、どんな顔して跡部と話せばいいんだよ。」
「高飛車な顔して好きものなんやなぁって、思いながら話せば?」
今度は、さっきよりも乱暴に、忍足を蹴飛ばした。
「痛いわ、ダブルスパートナーを蹴飛ばしたらあかんやろ。」
「知らねっ。跡部とでもダブルスくんでればぁ?」
「あの子とは、夜のダブルスパートナーやからええんよ。」
岳人は吹き出して笑った。
「それ、まじウケる。」
「そやろ?」
二人して声を出して笑った。