作業員の声が聞こえた。

結局、二人には気づかずに、もと来た道を帰っていく。

 

まだ、息も絶え絶えな不二を心配そうにみつめた。

「大丈夫か?」

「あ、それ、本心?」

「どうだかな。」

あまり笑わないけれど、少し笑った気がした。

 

「ねぇ、手塚。」

「なんだ。」

「僕ね、本当に君になら殺されてもいいって思ってるんだよ。」

制服のボタンを開けたまま、不二は空を仰いだ。

「どんなに追いついても、君はもっと高みへ上がっていく・・・君を想えば想うほど、残酷な現実が突きつけられる。」

 

隣にも立てず、ともに歩むこともできず。

ただただ、想うだけ。

魂がちぎれるくらいに、想うだけ。

 

いつから、こんなに弱くなってしまったんだろうか?

 

「離れていくくらいなら。」

 

不二は手塚の頬に触れた。

少し、震えている気がした。

 

「不二・・・・」

 

何も言わずに、何も言えずに。

ただ、その手にキスをした。

 

不二は少しだけ笑った。

「離れない・・とは言ってくれないんだね。」

手塚の開きかけた口を、不二の指が優しく静止させた。


「嘘も気休めも嫌いな僕たちだから、手に負えない。」

 

一番やさしいキスをした。

 

 

青空に走った飛行機雲が端のほうから消えていくのを見て

まるで僕たち見たいだと、笑って。

泣いた。

 

 

                          END

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