汚泥の沼で

伸ばした手は

憧れた

空だけ

 

 

「なぁ、跡部・・お前、今日うち寄る?」

誰もいなくなくなった部室で、真後ろで着替える跡部を振り返った。

彼は淡々と、振り返りもしないで、ボタンを留めている。

「いかない。」

「なんで?」

「そんなに暇じゃねぇ。」

こちらを見ない彼を、強引に向かせた。

「何、怒ってるん?」

不機嫌そうな顔で、でも目を合わせようとはしない。

「別に・・なんで俺が怒る必要があるんだよ。」

「俺が女と付きおうてるのが、そんなに気にいらん?」

「は?」

いつものように、失笑した。

「お前の、その頭はただの飾りかよ。あきれるな。」

「俺には、お前がやきもちやいてるように見えるやけど?」

眉間のしわがいつも以上に深く刻まれる。

「『うぬぼれんな』と、前にもいったが?」

「『うぬぼれさして』と、言うたやろ。」

「付き合いきれねぇ。」

「付きおうてないやん、俺ら。」

揚げ足をとるかのように、言葉を返す忍足にイラだった。

「何が言いたいんだ、お前。」

「別に?ただ、うちに寄るんかどうか聞いただけ。」

「いかねぇと言っただろうが。」

「そやったら、しゃあないわ。」

ロッカーに跡部の身体を押し付けた。

 

「ここで、するしかないねんなぁ。」

 

そのまま、口付けしようとした。

「馬鹿っ、離せ!」
「なんで?」
「何考えてんだよっ。」

「お前のこしか、考えてないで。」

嫌がる唇を強引に奪った。


それで、すべてが奪えるならと


本気で


願った。


「安心しなや、跡部。」

「あぁ?」

「女と付きおうても、お前とはセックスしたるわ。」
彼の両手を器用に、ほどけていたネクタイで縛る。

「お前は、ヤれる相手がおれば、満足やもんなぁ。」

必死で抵抗する。
「やめろっ、忍足っ。」

忍足は笑いながら、少しずつ彼の自由だけを奪っていく。

「・・・やめてやってもええよ?」

動きをやめて。

「『愛してる、忍足』って言うてくれたらな。」
耳元で、囁いた。

「誰がっ、そんなこと言うかよ!」

思ってたとおりの答えで安心した。

「嘘は嫌いやから、言わんで正解や。」

また耳元で囁いた。

「もし、言うてたら、ぶっ壊してるで。」

笑った顔が、いつもどおりで身体がすくんだ。

「・・こんなこと、女とやればいいだろうが。」
身体を震わせながら、声を絞り出す。

「あぁ。でも、どんな女よりもお前としたほうが、気持ちええよ?」

やさしく頭をなでた。

そうゆう行為が、彼の怒りをさらに掻き立てることと知っていて。

「俺ら、セックスの相性だけは抜群やな。」

「クソ野郎。」

「最高のほめ言葉。」

ズボンの強引に下ろす。

「慣らしてなくてもなくても、平気やろ?くわえ込むの得意やし。」

「・・・やめ・・っ。」

「愛してるで。」

息をついて。



「お前の、身体だけな。」

強引に、犯した。

「んっ・・あ。」

あまりの痛みに、言葉さえ、飲み込んだ。

「やっぱ、きついなぁ。」

それでも動きをやめようとしない。

「いたっ・・やめ・・」

「そんな可愛い声だしても、やめてやらんよ?」

忍足を押し出そうとして、身体をよじる。

それでも、執拗に彼は犯し続けた。

「ん・・っあ・・」

「気持ちようなってきた?」

身体が高潮するのがわかった。

「違っ・・ん・・」

「違わない。」

顔だけをこちらに向かせ、唇を合わせる。

「んぅ・・は・・」

限界が近いのか、身体を大きく振るわせる。

「我慢せんで、イってええよ?」

意地悪そうに、中をえぐった。
「あ・・はっ・・」

潤んだ目が、彼をにらんだ。

「綺麗な顔やな、汚したなるわ。」

忍足は口元に笑みを浮かべながら、深く、ついた。

「あぁ・・つ。」

跡部の身体が小刻みに痙攣した。

「ほんまに、可愛いなお前は。」

自分のものを引き抜いて、彼の顔にむかって欲望を開放した。

「んっ・・!」

突然の行為に反応しようにも、身体が動かない。

綺麗だと思った顔は

それでもやっぱり

綺麗なんだと 嫉妬した。

 

 

 

 

「何も、言わんの?」

何も言わず、ただ天井を見ている彼。

「・・・何も言うことなんざ、ねぇだろ。」

かすれて消えそうな声だった。

「そら、そうやな。」

ふいに、音のないその部屋に携帯の電子音がなった。

鳴り続ける、電話。

「うるさい。」

「女からやねん、待たせとったからなぁ。」

携帯を確認しながら、ぼやく。

「行けよ。」

「そのつもり。」

立ち上がって、自分のロッカーからタオルを出す。

「使えや、捨ててもかまわんし。」

投げられたタオルは、持ち主を失って地面に落ちた。

「じゃあな、跡部。」

「あぁ。」

「また、明日。」

それには答えなかった。

ドアを開けたら、やけに鮮明に夕暮れに染まった空が綺麗過ぎて

眩暈がした。

「・・きついわ、ほんま。」

心臓が、押し潰れるような感覚を嘆いた。




沈んだ身体を抱いて

恋に溺れたのだと

どうか

愛して

      

be drowned

END


後書き